認知症の予防

各国が認知症を減らす対策を取らないと、世界の患者数が2019年の5700万人から50年までに1億5300万人と約3倍に増えるとの推計を米ワシントン大などのチームがまとめ、6日付の英医学誌ランセットの姉妹誌に発表した。

人口の増加や高齢化が主な原因。

日本は生活習慣の見直しといった予防策の効果が出るため、分析の対象国の中で最も増加率が低いとされているが、それでも412万人から約1.3倍の524万人になるとしている。

引用元:日本経済新聞電子版

 

日々ある「言葉や単語が出てこない」「何をしようとしていたか思い出せない」といった状態は、単なる脳の老化である。一方、認知症になってしまうと「食事をしたことを覚えていない」「今いる場所がわからない」というような、認識する力、記憶や判断する力に障害が出てくる。

認知症は一度なってしまったら、根治しない病気だ。未だ有効な治療法も見つかっていない。脳が健全なうちからの対策が極めて重要といえる。

認知機能は年齢と共に低下する。認知症にならないためには、どうしたらよいのだろうか?

一般的に知られているいくつかのポイントについて調べて整理してみた。
第一は、運動をおこなうこと、第二に食事に気をつけること。第三に、社会的な活動に参加することである。

ウォーキング

1)運動

様々な研究から、運動が認知機能低下と認知症の予防に効果があることが分かってきている。

脂肪を燃焼させる運動で生活習慣病とその先の認知症を予防

ひとつは、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などメタボリックシンドロームに由来する生活習慣病との関係だ。特にアルツハイマー型認知症は「脳の糖尿病」と言われるほど、生活習慣病と密接な関係にある。中年期以降のメタボを防止するための運動は、認知症の発症の可能性を減らすために大切である。

有酸素運動の効果

二つ目に、有酸素運動が認知機能の低下と認知症の予防に効果があることが報告されている。但し、有酸素運動が認知症予防に有効なことの具体的なメカニズムはまだわかっていない。

具体的に何をすればよいか?

先ずは手軽に始められるウォーキングから始めよう。ラジオを聴いたり、風景を楽しんだり、歩きながらできる楽しみを見つけるのが、続けるコツである。

また頑張りすぎないこと、日常の中に気楽に続けられるように組み込むのがコツだ。
運動習慣をつけて、健康な脳を保とう。

2)なぜ食事と栄養補給が対策になるのか?

糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病は認知症と強く関連する。認知症予防のために、食生活を見直そう。

糖尿になる病が認知症のリスク

男女ともに高齢になるほど、糖尿病の割合は増えており、平成29年度の国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる者」の割合が70歳以上の男性の25.7%、女性の19.8%にものぼった。

そして、糖尿病の高齢者はそうでない高齢者に比べて、認知症になる割合が約2倍にもなる。糖尿病の期間が長いほど認知症にかかるリスクが高いこともわかっている。糖尿病の原因は、ストレスや運動不足もあるが、脂質や糖質の高い食事が強く影響する。

高血圧・高脂血症が脳血管性認知症のリスクを高める

九州大学が50年間以上に渡って実施している「久山町研究」という生活習慣病の疫学調査研究によって、高血圧の人は正常血圧の人に比べて脳血管性認知症の発症頻度が、4.5倍~10倍もあることがわかっている。 (Ninomiya T,Hypertension,2011)。

また、高脂血症(脂質異常症)についても、正常値以上の中性脂肪やコレステロールにより、血液がドロドロになり、頸動脈にプラークと呼ばれる壁在血栓を形成し、脳梗塞の原因となる。高脂血症などを起因とする動脈硬化は、認知症を引き起こすリスクを高めると考えられている。

具体的に何をすればよいのか?

認知症予防に効果がある食事

認知症と食習慣の研究として、アメリカのラッシュ大学メディカルセンターの研究グループが2015年に発表した研究結果に「『マインド食がアルツハイマー型認知症を予防する効果が高い」というものがあります。日本人にもイタリア料理として馴染み深い「地中海料理」はオリーブオイル、ナッツ類、果物や魚介類を積極的にとる食事です。ダッシュ食は、高血圧を防ぐ食事の略語で、脂肪やコレステロールを控え、ミネラルを増やすことで、高血圧の予防と改善に効果があるとされる食事法です。これらをあわせた「マインド食」は、脳の健康を保つために積極的に取ると良い食材10項目と控えたい5項目をリストアップしており、日々の食事に取り入れやすくなっています。
積極的に取りたいオススメ食材
・緑黄色野菜(キャベツ・レタス・ほうれん草・ニンジン・ブロッコリー等)
・その他の野菜(ごぼう・大根・玉ねぎなど)
・ナッツ類(無塩のミックスナッツなどがオススメ)
・ベリー類(ブルーベリー・ラズベリーなど、抗酸化作用のあるアントシアニンが含まれている)
・豆類(大豆・ひよこ豆など)
・全粒穀物(玄米や全粒粉のパンなど)
・魚(特にイワシ・サバなどの青魚)
・鶏肉(高蛋白・低脂質のムネ肉・ささみなどがオススメ)
・オリーブオイル(オレイン酸・ポリフェノールが豊富)
・ワイン(酒類で唯一のオススメ、ポリフェノールが豊富)
避けたい5つの食材
・チーズ類
・バターやマーガリンなど
※ただし、久山町研究では、日本人は乳製品を多く摂った方が認知症になりにくいと報告されています。そこには、元々が日本人は欧米人に比べて乳製品の摂取量が半分くらいである、という背景があります。
・お菓子(糖分や脂肪分が多いケーキ等)
・ファストフード
・脂肪の多い牛肉・豚肉

引用元:脳活総研

60歳代は塩分摂取量が最も高い!

日本人の食塩摂取量は世界的に見ても高く、厚生労働省は18歳以上の男性は1日あたり8.0グラム、女性は1日7.0グラム未満という目標を定めている。因みに世界保健機関(WHO)の定める食塩摂取目標は5グラム。平成29年度の国民健康・栄養調査では、男性平均10.8グラム、女性9.1グラムとなっている。更に、20歳代が最も少なく、60歳代が最も高い、という結果がでている。塩分のとりすぎは高血圧を招くので、減塩を心がけよう。

また、久山町研究では、白米やアルコールの摂取量を少なくした食事に、認知症予防の可能性があることがわかっている。

3)出かける、人と会う

認知症の予防にあたって、運動や食事と並んで、社会参加にも注目が集まっている。2012年の厚生労働科学研究班(研究代表者:近藤克則氏)の調査によれば、スポーツ関係・ボランティア・趣味関係のグループ等への参加の割合が高い地域ほど、転倒や認知症、鬱のリスクが低い傾向が見られると報告している。

人間関係が希薄になってきた現代では、社会的接触の乏しい生活をしていると、認知機能が下がりやすく、軽度認知障害のリスクが上がる。またうつ病が認知症のリスクを高めることはかねてから言われており、早めに精神神経科を受診しよう。
新しい社会活動に参加すると、逆に抑うつ傾向を高めるという研究もある。むやみに新しい活動に参加してストレスを溜めるのではなく、自分がストレスなく楽しめることが何より大切である。

具体的に何をすればよいか?

 

楽しみながら頭と体を使う能動的な活動を

体を使って、頭で考え、脳を活性化させよう。読書や映画が趣味という方は、受動的に見る・読むだけでなく、感想を言葉にしてまとめてみる、パソコンで書いてみる、誰かに読んでもらう、など能動的な活動することを勧めたい。

少しの変化に億劫がらず挑戦してみよう

人と会って話す、というのも大切。普段はなかなか話さない方と話してみよう。
人と会話する時に、相手の話に共感したり、どうしたら上手く相手に伝わるだろうと考えることは、脳への刺激となる。
「好奇心が大切」とはよく言われるが、普段の生活を、少しだけ変えてみることを意識的に行うだけで、新しい刺激になる。最初は億劫かもしれないが、最初の一歩、少しの変化に挑戦してみることが大切だ。

情報元:健康長寿ネット
情報元:脳活総研